経営企画

  • 経営の頭脳
  • 全社視点の仕事
  • 数字と戦略の交差点
  • 社長室に一番近い職種
記事更新日 2026年6月12日

会社の未来を設計する仕事
経営企画(Corporate Planning)

経営企画は、単なる「資料をつくる部署」ではありません。中期経営計画の策定からM&A推進、予実管理、新規事業立案まで、経営陣の意思決定を直接支える会社の司令塔です。情報収集と分析だけでなく、各部門を動かす調整力・胆力が問われる場面も多く、決して楽な仕事ではありません。しかし、会社全体を俯瞰しながら未来を設計するこの仕事には、他の職種では得られない視座とやりがいが詰まっています。

仕事内容

  • 中期経営計画・年度予算の策定と進捗管理
  • 経営会議・取締役会の資料作成と議事進行サポート
  • M&A・アライアンス・新規事業の調査・立案・推進

働き方の特徴

  • 基本的にオフィスワーク中心。リモート対応可の企業も増加傾向
  • 経営陣や各部門長との打ち合わせが多く、社内調整が業務の大きな比重を占める
  • 決算期・中計策定シーズンは残業が集中しやすく、繁閑の波が大きい
INDEX
目次

経営企画に向いている人の特徴

数字と言葉を同時に扱える思考力

経営企画では、財務データを読み解きながら「だから我が社はこう動くべき」という言葉に変換する作業が毎日発生します。Excelでシミュレーションをしながら、その場で経営陣へ口頭説明を求められることも珍しくありません。前職が財務・経理・コンサルタントだった方は、この数字と言語化を行き来する感覚を自然に持っています。

曖昧な状況でも前に進める推進力

経営企画の仕事には「正解」がありません。「新規事業の候補を3つ出せ」「競合のM&A動向を来週までに整理して」といった、ゴールが明確でない依頼が次々届きます。待っていても情報は来ない。自分で仮説を立て、動き、修正する。コンサルタントや事業部の企画担当出身の方は、この「答えのない問いに向き合う筋肉」をすでに鍛えています。

社内を横断して動ける調整力

経営企画は全部門の情報が集まる場所であると同時に、全部門に動いてもらわなければ何も実現できないポジションです。営業・製造・財務・人事、それぞれの論理と事情を理解し、全員を同じ方向に向けるコミュニケーション力が必要です。前職で社内プロジェクトのPMや業務改善のリーダーを担っていた方は、この横断調整の経験が即戦力として評価されます。

経営企画の職業データ

平均年収(正社員)
574万円〜
※求人ボックス給料ナビ・KOTORA JOURNAL調査より
※経験年数・企業規模によって幅が大きく383〜1,235万円の範囲。部長・執行役員クラスでは1,000万円超も現実的
平均年齢
38歳前後
必要資格

特になし

※中小企業診断士・MBA・簿記2級以上の取得を推奨
求人数
3,000件以上
※サイト内連携データより
必要スキル
  • 財務・会計の基礎知識(P/L・B/S・CF読解力)
  • Excel・PowerPointを使った資料作成・データ分析力
  • 経営戦略・マーケティングフレームワークの活用力(3C・SWOT・PPMなど)
  • 社内外ステークホルダーへのプレゼンテーション・説明力
  • プロジェクトマネジメント・社内調整力
参考元URL:求人ボックス給料ナビ(https://xn--pckua2a7gp15o89zb.com/経営企画の年収・時給)/KOTORA JOURNAL(https://www.kotora.jp/c/52714/

経営企画の主な業務

AI生成のイメージです。

中期経営計画の策定

3〜5年後の会社の姿を描き、そこに至るロードマップを作るのが中計策定です。市場環境の調査、自社の強み・弱みの分析、売上・利益目標の設定、各部門への落とし込みまで、会社全体を巻き込む一大プロジェクトです。難しいのは「数字の整合性」と「現場が動ける現実感」を同時に担保することで、経営陣の理想と現場の実態をすり合わせる高度な調整力が問われます。前職がコンサルタントや事業企画だった方は、フレームワークの使い方と仮説思考をそのまま活かせる業務です。

予実管理と経営分析

月次・四半期ごとに「計画と実績のギャップはなぜ生まれたか」を分析し、経営陣に報告します。単なる数字の読み上げではなく、「営業部門のQ3の未達は新製品の立ち上げ遅延が主因であり、来期に向けて○○の対策が必要」という因果関係と提言まで含めた資料を作ることが求められます。財務データを読む力だけでなく、各部門の実態を把握するための情報収集力・ヒアリング力が重要です。

M&A・アライアンスの推進

「この会社を買収すれば事業スピードが5年早まる」という判断を、財務モデルと市場分析で裏付け、経営陣に提示する。これが経営企画のM&A業務の核心です。FA・弁護士・税理士など外部専門家とのやりとり、デューデリジェンスの調整、社内稟議の設計まで、プロジェクト全体を仕切る実務力が必要です。経営企画ならではの「大きなディールに立ち会える」醍醐味が凝縮された業務です。

経営会議の設計と資料作成

取締役会・経営会議の議題設計から資料作成・議事録・フォローアップまで、経営の意思決定プロセスを裏で支える仕事です。「誰が何を決めるべきか」「この論点をどう整理すれば経営陣が判断しやすいか」という設計力が問われます。資料の仕上がりは経営判断の質に直結するため、完成度へのこだわりと締め切りを守る緊張感が常に伴います。

経営企画
1日の仕事の流れ

08:30 朝イチのニュースチェックと情報収集

出社前後の30分で日経・業界紙・競合IRをスキャンします。「昨日の夜、競合が大型買収を発表していた」という情報を朝一番で上司に共有できるかどうかが、経営企画担当の信頼に直結します。情報感度が、この仕事の第一歩です。

10:00 経営会議の資料修正と経営陣レビュー

来週の取締役会に向けた資料を役員にレビューしてもらいます。「このページは論点がぼやけている」「数字の根拠をもう一段掘れ」というフィードバックに、即座に応える。完璧だと思っていた資料が赤だらけで返ってくることもありますが、その一言一言が視座を上げてくれます。

13:00 各部門へのヒアリングと数字の突合

予実管理のために営業・製造・管理部門を個別に回ります。「Q2の利益が計画比マイナス8%になりそう」という情報をいち早く拾い、原因を整理して経営陣に報告するのが役割です。現場の実態と経営の数字をつなぐ「翻訳者」の仕事がここにあります。

15:30 新規事業の市場調査と仮説づくり

CEOから「この市場、本当に取りにいけるか?」と打診されたテーマの調査を進めます。TAM・SAM・SOMの試算、競合のポジショニング、参入障壁の分析をまとめ、「やるべき理由」と「やらない理由」を両面から資料に落とし込みます。答えがない問いに向き合う、経営企画の真骨頂です。

17:30 社外パートナーとの打ち合わせ

M&Aアドバイザーやコンサルファームとのミーティング。外部の視点を取り込みながら、自社の論点を整理します。「その分析、社内データと突合するとどう変わるか」と問い返しながら、自分たちの戦略仮説を磨いていきます。

19:30 翌日の議論に備えた資料の仕上げ

夕方以降は集中して資料を完成させる時間です。経営企画の仕事は「明日の朝までに」という依頼が少なくありません。しかし、追い込みで仕上げた資料が経営判断を動かしたとき、この時間の密度が報われたと実感します。

経営企画のミッション・社会での役割

会社の「羅針盤」を握る存在

経営企画がなければ、企業は目の前の数字だけを追う組織になります。3年後・5年後に向けた戦略を描き、限りある経営資源をどこに集中させるかを設計する仕事は、会社の存続と成長に直結します。市場の変化を読み、競合を分析し、経営陣と現場をつなぐ経営企画の存在が、組織が正しい方向に向かい続けるための「羅針盤」です。

経営企画のリアル

やりがい
自分が描いた戦略が会社を動かした瞬間

「あなたが提案した新規事業、正式にGOになったよ」という一言を経営陣からもらったとき、半年かけて積み上げた調査・資料・説得のすべてが報われます。経営企画のやりがいの核心は、意思決定の最上流にいられることです。コンサルタントが外から提言して終わりであるのに対し、経営企画は提言したあと自分で実行の旗を振れる。「自分が会社の未来を変えた」という手触りが、他の職種にはない強烈なやりがいになります。また、各部門の最新情報が自然と集まるポジションにあるため、業界・事業・財務を横断する圧倒的なビジネス視野が身につきます。10年後に「あの経験があったから今の自分がある」と実感できる、キャリア資産の宝庫です。

大変なこと
板挟みと孤独というリアルな負荷

経営企画は、経営陣の要求と現場の実態に挟まれ続けるポジションです。「来週の取締役会までに中計の数字を固めてほしい」という経営陣の依頼と、「そんな急に言われても現場は動けない」という各部門の反発の間に立ち、着地点を見つけ続けるのがこの仕事の日常です。また、高い機密性ゆえに社内で相談できる相手が限られ、孤独を感じやすい側面もあります。乗り越えるカギは「信頼残高」の積み上げです。日頃から各部門の担当者と丁寧に関係を築き、「経営企画が動かすなら協力しよう」と思ってもらえる存在になること。この人望と調整力こそ、優秀な経営企画担当者が長年かけて育てる最大の武器です。

参考元URL:BackOfficeDB(https://backofficedb.com/article/39/

経営企画の将来性

AI生成のイメージです。

AI時代の需要と、広がるキャリアパス

社内キャリアパス

経営企画のキャリアは、「深さ」と「広さ」の2軸で設計されます。入職1〜2年目はデータ収集・資料作成・議事録など補佐業務が中心で、会社の数字と意思決定プロセスを全体的に把握することが最初のゴールです。3年目以降は特定テーマ(M&A・新規事業・IR等)を担当し、自分で仮説を立てて経営陣に提言できる存在になります。5年目前後で、スペシャリストとして特定領域を深掘りするルートと、部長・経営企画部長へのマネジメントルートに分岐します。10年以上のキャリアでは、CFO・CSO・事業会社の社長補佐・子会社役員という経営ポジションが現実的な選択肢になります。

ステップ 役職 平均年収目安
入社1年目 スタッフ(補佐業務) 400〜500万円
入社3年目 担当(テーマオーナー) 550〜700万円
入社5年目 主任・課長代理 700〜900万円
入社10年目 部長・経営幹部候補 900万円〜

社外キャリアパス

経営企画で培った「全社視点」「財務感覚」「経営陣との対話経験」は、業界を越えて高く評価されます。最も親和性が高い転職先は戦略コンサルタントで、経営企画で実際の会社を内側から動かした経験は、コンサルファームにとって「実戦経験者」として即戦力評価を受けます。逆に、コンサル出身者が事業会社の経営企画に転じるルートも活発で、双方向の流動性が高い職種です。ベンチャー・スタートアップでは「0→1の経営基盤づくりを担えるCFO候補・COO候補」として需要が高まっており、ストックオプション込みの高待遇オファーも増えています。

  • 戦略コンサルタント:経営課題の構造化・仮説立案・資料作成の経験がそのまま提案力に直結
  • ベンチャー・スタートアップCFO/COO:全社管理・資金調達・事業計画策定の経験が創業期の会社に欠かせない力に
  • PEファンド・M&Aアドバイザリー:財務モデリング・デューデリジェンス経験が企業価値評価の現場で活きる
  • 事業部長・子会社社長:全社俯瞰と各部門調整の経験が事業運営のトップとして即応力に
  • IR・広報:経営情報の整理・発信力が投資家・メディア対応の説得力につながる

市場価値

経営企画職の求人は、大企業・中堅企業・スタートアップを問わず安定的に存在しています。平均年収は約574万円で、給与幅は383〜1,235万円と幅広く、経験・スキル・企業規模による差が大きい職種です。年代別では20代で約526万円、30代で約633万円、40代で約759万円、50代では約937万円と、経験を積むごとに大幅な増加が見られます。スタートアップ・ベンチャー市場では、事業成長フェーズでのCFO・経営企画ポジションの需要が急増しており、ストックオプション込みの総報酬では大企業を上回るケースも珍しくありません。フリーランス・副業市場でも、事業計画策定・投資家向けIR支援・M&Aアドバイスなどのスポット需要が拡大しており、副業経営企画として月20〜50万円の報酬を得るケースも増えています。

AI時代における価値の再定義

経営企画の分野ではすでに、市場環境や競合の調査といった業務の効率化にAIが大きな効果を発揮しています。具体的には、競合分析・市場調査のリサーチ業務、決算資料の要約・比較、財務モデルの初稿作成、会議録の自動生成・要約などが、生成AIによって大幅に効率化されています。かつて数日かかった業務が数時間で完了するようになり、経営企画の「作業者」としての価値は確実に下がっています。一方でAIが代替できない領域は明確です。「なぜこの数字になったのか」という背景を現場から引き出す情報収集力、相反する利害を持つ経営陣と現場を同じ方向に向ける調整力、不確実な未来に向けて「こちらに賭ける」という判断を下す意思決定支援力――これらは人間にしかできません。AI時代に強い経営企画人材になるには、AIで「速さ」を確保しつつ、「判断の質」と「人を動かす力」に集中投資することが重要です。

関連職種・他職種との違い

  • 事業企画:新規事業・既存事業の成長戦略が共通 / 経営企画は全社・グループ全体を対象とし、経営陣の意思決定に直接関与する点が異なる
  • 財務・経理:数字の分析・予実管理が共通 / 経営企画は数字の「意味」を戦略に変換し経営判断を支援することが主務
  • 戦略コンサルタント:経営課題の構造化・解決策立案が共通 / コンサルは外部視点・プロジェクト完結型、経営企画は内部視点・継続的な実行責任を持つ
  • IR(投資家向け広報):経営情報の整理・発信が共通 / 経営企画は内側の戦略立案・実行支援が主、IRは外部への説明責任が主

会社の未来を内側から動かす仕事

「経営企画はエリートだけの仕事」というイメージで、最初から選択肢に入れていない方がいます。しかし実際の経営企画への転職市場では、財務・営業・コンサル・事業部企画など多様なバックグラウンドからのキャリアチェンジが増えています。大切なのは、「全社を動かしたい」という意思と、数字と人の両方に向き合い続ける覚悟を持てるかどうかです。ネットの評判だけで判断するには、あまりにも惜しい職業です。