タイル工

  • 割り付けで決まる美しさ
  • 床・壁・外壁を仕上げる手仕事
  • 見えない下地への目配り
  • 建物を長く守る補修の技
記事更新日 2026年10月15日

タイルの貼付けで、建物の顔を決める
タイル工(タイル張工)

タイル工は、建物の床や壁、外壁にタイルを張って表面を仕上げる職人です。張る前の墨出しや割り付けから目地詰めまでの出来が、仕上がりとして誰の目にも見えるため、ごまかしがききません。しゃがみ姿勢や屋外作業が続き、体への負担も小さくない仕事です。それでも、腕が上がるほど任される面積が広がり、出来高給や独立という形で技術が収入に結びつく道があります。

仕事内容

  • 下地の清掃・確認、墨出し、割付図にもとづくタイルの割り付け
  • モルタル等を使ったタイルの張り付け
  • 目地詰め、表面の清掃、既存外壁の張り替えなどの改修

主な働く場所

  • マンション・ビルなどの新築工事現場
  • 店舗・住宅の新築やリフォームの現場
  • 外壁改修工事中の建物
INDEX
目次

タイル工に向いている人の特徴

完成形から逆算する空間把握

タイル工の仕事は、張り始める前に多くのことが決まります。たとえば浴室の壁なら、窓や水栓の位置を見ながら、どこから張り始めれば端に細く切ったタイルが来ないかを割付図で考えます。頭の中で仕上がった壁を組み立て、そこから1枚目の位置を決めていく力が欠かせません。空間判断力や形態知覚が求められるので、図面を読む仕事やレイアウトを考える仕事をしてきた人なら、この逆算の感覚に入りやすいはずです。

同じ動きを崩さない根気

張り付けの作業は、モルタルを塗り、タイルを置き、振動工具で押さえるという動作の繰り返しです。何百枚も張るうちに目地幅が少しずつ広がれば、最後の列で帳尻が合わなくなります。疲れが出てくる夕方ほど、朝と同じ丁寧さを保てるかどうかが品質を左右します。地味な反復に飽きず、数列ごとに水糸と見比べて確認できる人は、着実に腕を上げていけるでしょう。気分によって作業の速さが変わりやすい人は、最初のうちはここで苦労するかもしれません。

他の職人と工程を合わせる調整力

タイル工が現場に入るのは、下地をつくる職人や設備の配管工事などが終わってからです。前の工程が遅れれば、張り付けの日程もずれます。職長はそのたびに現場監督と相談し、モルタルが硬化する時間も考えながら作業の順番を組み替えます。接客や営業で相手の都合を聞きながら予定を組んできた経験は、こうした場面で生かせます。

タイル工の職業データ

平均年収
約467万円
※job tag掲載の令和7年賃金構造基本統計調査より(466.9万円)。タイル工を含む「ブロック積工、タイル張工」の職業分類に対応する統計値で、ブロック積工と共通の値です。雇用形態を正社員に限った値ではありません。
平均年齢
42歳前後
※job tag掲載の令和7年賃金構造基本統計調査より(41.6歳)
必要資格

特になし

※推奨資格は技能検定の「1級タイル張り技能士」「2級タイル張り技能士」。受検には原則として実務経験が必要です(実務経験のみの場合、2級は2年以上、1級は7年以上。学歴・訓練歴により短縮あり)。
求人数
○○件以上
※サイト内連携データより
必要スキル
  • 墨出し・割り付けの正確さ
  • コテや振動工具の扱い
  • 下地の状態を見極める目
  • 反復作業を続ける体力と根気
  • 他職種との工程調整
参考元URL:職業情報提供サイト(job tag)『タイル工 - 職業詳細』(公開日の記載なし)(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/38)/厚生労働省『受検資格(都道府県知事の実施する職種)』(公開日の記載なし)(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/syokunou/ginou/aramashi/menjyo.html)

タイル工の主な業務

AI生成のイメージです。

下地の確認と墨出し・割り付け

作業は、タイルを張る床や壁の下地を清掃し、状態を確かめるところから始まります。次に、基準となる線を記す「墨出し」を行い、水糸を張って高さや通りの基準を決定。そのうえで割付図にしたがい、タイルをどこから何枚並べるかを割り振っていきます。難しいのは、柱や窓、点検口など、図面どおりにいかない場所の処理です。現場で寸法を測り直すと、図面と数ミリずれていることも。そうしたときは、切れ端の位置を人目につきにくい隅に寄せるなど、完成後にその空間を使う人の目線まで考えて調整します。ここで決めた線が最後の1枚まで基準になるため、正確さは最優先事項です。割り付けが決まった時点で完成の姿がほぼ見えてくるので、張る前の段階こそがこの仕事の面白さだと感じる人もいます。

モルタルを使った張り付け

割り付けが終わったら、セメントと砂と水を練り合わせたモルタルを下地に規定の厚さで塗り、タイルを所定の位置に目地幅どおりに張り付けていきます。張ったタイルはヴィブラートと呼ばれる振動工具やコテの柄で押さえ、モルタルに密着させて表面をそろえます。目地部分にはみ出た余分なモルタルは、この段階でかき落としが必要です。表面がそろって見えても、押さえ方が甘ければ密着が足りない部分が残るおそれがあるため、見た目だけで判断せず、手の感覚でも確かめながら進めます。最初は1枚ずつ確かめるので時間がかかりますが、押さえ具合が体でわかるようになると、速さと確かさが両立していきます。製造の現場で品質を守る工程を担ってきた経験がある人なら、「見えない部分ほど手を抜かない」という感覚には覚えがあるでしょう。

目地詰めとタイルのカット・清掃

タイルを張ったあとは、モルタルがある程度硬化するのを待って目地詰めを行います。job tagでは、その時期の目安をタイル張り後1日以上経過してからとしています。目地材を隙間に詰めて表面を整え、目地モルタルが硬化したあとに水洗いなどで表面を清掃します。壁の端や配管まわりでは、タイルを電動工具で切って寸法を合わせる作業も欠かせません。切断に使う工具の砥石を取り替える業務には「自由研削といしの取替え等の業務特別教育」が必要で、CCUS(建設キャリアアップシステム)のレベル2の判定でも、この特別教育と足場関係の教育・講習の組み合わせが保有資格の選択肢の一つになっています。入職後は熟練技能者のもとで見習いから始め、こうした作業を段階的に任されていくケースが多いとされています。

外壁タイルの改修・補修

新築だけでなく、既存の建物の改修もタイル工の仕事です。国土交通省によると、建築基準法の定期報告制度では、タイル張りなどの外壁について、おおむね6か月から3年以内に一度は手の届く範囲の打診等を、おおむね10年に一度は落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等を実施。こうした調査で浮きなどの不具合が見つかれば、張り替えなどの改修工事が行われます。改修の現場では、既存のタイルとの見た目の差をどう抑えるか、古い下地の状態をどう判断するかなど、新築とは違う判断が求められます。

タイル工の
1日の仕事の流れ

08:00 朝礼と危険予知

現場の朝礼で、その日の作業場所と注意点を全員で確認。タイル工の班は、足場の状況や他の職人と作業エリアが重なる時間帯を聞き取り、職長が若手に今日の作業順を短く伝えます。

08:30 前日の区画の目地詰め

最初の作業は、前日に張り終えた浴室の壁の目地詰めです。張り付けから1日以上たち、モルタルが硬化したのを確かめてから、目地材を隙間に詰めていきます。若手は職長の手元を見ながら、詰める量の加減をつかもうとしています。

10:30 別フロアの廊下で墨出し

別のフロアに移り、共用廊下の床に墨出しをします。水糸を張って割付図と実際の寸法を照らし合わせると、端の1列だけ幅が足りないことがわかります。職長は細く切るタイルを柱の陰に寄せる案を決め、若手と線を引き直します。

12:00 昼休憩

現場の休憩所で弁当を広げます。話題は午前中に見つけた寸法のずれから、どの隅なら細いタイルが目立たないかへと移り、若手は午後に張る床の並びを頭の中でもう一度なぞることも。

13:00 廊下床の張り付け

午前に引き直した線を基準に、モルタルを塗ってタイルを張り進めます。ヴィブラートで押さえるたびに表面の高さを確かめ、数列ごとに水糸と見比べて調整。夕方が近づくと膝と腰がこわばりますが、目地幅は朝と同じに保ちます。

16:30 片付けと翌日の確認

張り終えた床は翌日以降の目地詰めまで人が入らないよう表示を出します。道具を洗い、残った材料を数えて現場監督に進み具合を報告して帰路につきます。

タイル工のミッション・社会での役割

毎日触れる面を、長く安心して使える形に

job tagによると、タイルは仕上げ材料の主力となっており、マンションの外壁など美しく高級感のある建物が求められる中で需要が伸びているとされています。一方で外壁のタイルは、劣化すれば落下の危険につながるため、国は定期的な打診等の調査を求めています。タイル工の技術が途切れれば、新しい建物の仕上げだけでなく、調査で見つかった不具合の補修も進めにくくなるでしょう。人が歩き、触れ、見上げる面を、安全に長く使える状態に整えることがこの仕事の役割です。

タイル工のリアル

やりがい
照明が点いた日のエントランス

引き渡しを数日後に控えたマンションのエントランスで、初めて本番の照明が点きます。職長と若手は床の端にしゃがみ込み、光を斜めに受けたタイルの面を目で追います。目地は奥の壁までまっすぐに通り、柱の陰に寄せた細いタイルも目立ちません。様子を見に来た現場監督が「きれいに通ったね」と声をかけると、若手は自分が担当した区画をもう一度見直して、これから住む人たちの通り道になる床に感慨深さを感じることでしょう。

大変なこと
体への負担と天候に左右される収入

床張りではしゃがんだ姿勢が続き、外壁では夏の日差しや冬の寒さの中、足場の上で作業しなければなりません。乗り越え方としては、膝当てや台車で体の負担を減らすこと天候の影響を受けにくい内装の仕事を挟んで、工程を調整することが挙げられます。

参考元URL:職業情報提供サイト(job tag)『タイル工 - 職業詳細』(公開日の記載なし)(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/38)

タイル工の将来性

AI生成のイメージです。

AI時代の需要と、広がるキャリアパス

社内キャリアパス

入職後は熟練技能者のもとで見習いとして始め、次第に高度な仕事を覚えていくケースが多いとされています。実務経験2年以上で受検できる2級タイル張り技能士に合格し、就業日数645日(3年)を積むと、CCUSのレベル2の要件を満たせます。その後は職長または班長としての経験を重ね、1級タイル張り技能の取得や職長・安全衛生責任者教育の修了などにより、就業7年(1505日)でレベル3へ。さらに職長としての就業3年を含む就業10年(2150日)と、登録タイル張り基幹技能者などの資格でレベル4に進む道があります。給与は一人前になるまで月給、一定の水準に達してから出来高給に変わるケースが多いとされていま。

ステップ役職平均年収目安
入社1年目見習い(CCUSレベル1)383〜518万円
入社3年目タイル張り技能者(CCUSレベル2)431〜579万円
入社5年目班長(CCUSレベル2)431〜579万円
入社10年目職長(CCUSレベル3)486万円〜660万円
※国土交通省「CCUSレベル別年収(令和8年4月改定)」関東ブロック・タイル張り分野のレベル1〜3の標準値(下位15%程度の年収相当)〜目標値(平均以上)をもとに作成。3年目は就業645日と2級タイル張り技能士等の要件を満たした場合を想定しています。レベル3は就業7年(1505日)等が要件のため、5年目はレベル2の値としています。レベル4(登録タイル張り基幹技能者等)は557〜739万円以上です。公共工事設計労務単価が賃金として支払われた場合の試算で法的拘束力はなく、職業データの平均年収(賃金構造基本統計調査・ブロック積工を含む職業分類の全国値)とは算出方法・対象が異なります。なお、関東・北海道・東北以外のブロックでは、タイル張り分野は標本数不足のため算定されていません。

社外キャリアパス

身につけた技術は、会社の外でも生かせます。この職業で働く人が多いと感じる就業形態として「自営、フリーランス」を挙げた割合は44.0%でした(「正規の職員、従業員」は48.0%)。数人の技能者を抱えてタイル工事業を営むケースも見られます。また、タイル張りはれんが積みから発展した技術で、両方の作業を併せて行う人も多いとされているので、現場で工程や品質を見てきた経験は、施工管理や改修工事の分野でも役立ちます。

  • タイル工事の事業主(独立):割り付けから仕上げまでの技術と、元請との工程調整の経験を生かして自ら仕事を受ける
  • 建築の施工管理:仕上げ工程の順番や品質の勘どころを、工程表や検査に生かす
  • 外壁改修の専門会社:張り替えや下地の見極めの経験を、定期調査後の補修工事に生かす
  • リフォーム会社:浴室や玄関まわりなど、住まいの改修でタイル仕上げの知識を生かす
  • れんが・ブロック積み:同じ職業分類で関連技術へ領域を広げる

市場価値

ハローワーク求人統計(令和7年度)では、タイル工を含む「ブロック積工、タイル張工」の有効求人倍率は全国で17.81倍、求職者1人あたり約17.8件の求人がある計算です。求人賃金(月額)は29.9万円で、前年度より0.9万円上がっています。同じ職業分類の就業者数は、令和2年国勢調査で全国24,510人です。建設業全体では、技能者のうち60歳以上が約4分の1を占める一方、29歳以下は約12%にとどまります(厚生労働省、2024年12月公表)。建物の側を見ると、築40年以上の分譲マンションは2023年末時点で約136.9万戸あり、10年後には約2.0倍に増える見込みです(国土交通省)。外壁を含む建物の維持・改修の仕事は、今後も続いていくと考えられます。

AI時代における価値の再定義

外壁タイルの調査では、技術による置き換えが始まっています。国土交通省は2022年1月の告示改正で、テストハンマーによる打診以外の方法として、打診と同等以上の精度をもつ無人航空機による赤外線調査を明確化しました。2021年には太平洋セメントが、打診作業をロボットに置き換えた外壁診断サービスの本格開始を発表しています(異常箇所は人が打診音の録音を聞いて判断する仕組み)。施工でも、中国のPartner Roboticsが床タイル敷設ロボットを展開し、施工面積が約10万平方メートルに達したと2025年12月に報じられています。――一方で、job tagの「機械やコンピュータによる仕事の自動化」の値は1.5と低く、凹凸のある既存下地の判断や、柱・開口部まわりの割り付け、改修現場での部分的な張り替えなどは、職人の判断が求められる場面が多い領域です。

関連職種・他職種との違い

  • 左官:コテを使ってモルタルを扱う点が共通 / 左官は塗った面そのものが仕上げになるのに対し、タイル工はモルタル等を介してタイルを張り、タイルの面で仕上げる
  • ブロック積工:job tagでは同じ「ブロック積工、タイル張工」の職業分類で、兼業する人も多い / ブロック積工は材料を積み上げて壁そのものをつくり、タイル工はできあがった下地の表面を仕上げる
  • 石材施工の技能者:割り付けや張り付けの考え方が近い / 扱う材料が石材で、CCUSでも「石材施工」として別の能力評価分野になっている
  • 内装仕上工:建物の内側の仕上げを担う点が共通 / 主にボードや床材などを扱う職種で、CCUSでも「内装仕上工事」として別分野で評価される
参考元URL:国土交通省『CCUSレベル別年収の概要(令和8年4月改定)』(令和8年4月改定・同年7月1日訂正)(https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001993737.pdf)/国土交通省『能力評価基準【タイル張り】』(公開日の記載なし)(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001976452.pdf)/職業情報提供サイト(job tag)『タイル工 - 職業詳細』(公開日の記載なし)(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/38)/厚生労働省『建設業の人材確保・育成に向けた取組を進めていきます~厚生労働省・国土交通省の令和7年度予算案の概要~』(2024年12月27日)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46673.html)/国土交通省『築40年以上のマンションストック数の推移』(2023年末現在)(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001623967.pdf)/国土交通省『建築:定期報告制度における外壁のタイル等の調査について』(公開日の記載なし)(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000161.html)/ニュースイッチ by 日刊工業新聞社『太平洋セメントがマンションの外壁診断で軽量ロボットを活用、作業時間を半減』(2021年3月9日)(https://newswitch.jp/p/26252)/36Kr Japan『建設現場でロボット導入が加速 中国「Partner Robotics」、墨出し・タイル敷設で実績拡大』(2025年12月11日)(https://36kr.jp/443953/)/厚生労働省『受検資格(都道府県知事の実施する職種)』(公開日の記載なし)(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/syokunou/ginou/aramashi/menjyo.html)

張る前の計算が、出来栄えを決める仕事

タイル工の腕の差は、どこで生まれると思いますか。並べる手の速さより先に、張る前の割り付けと下地の見極めで、出来栄えの多くが決まります。入り口はさまざまで、職業訓練校で基礎を学んでから入る人もいれば、家業のタイル店を継ぐ人、設備や内装など別の建設職種から移ってくる人もいます。1枚目を置く位置に迷いがなくなったとき、この仕事の奥行きが見えてきます。